6月13日は東欧の滞在最終日、ウイーンの街中にあるホテルを10時30分にチェックアウトして空港に向かう朝。
前日はウイーン歴史地区を6時間散策し、自由時間はオペラ座のカフェでコーヒーを味わい、夕食後はクラシックコンサートと忙しい最後の日程をこなした。連泊したホテルに帰ったのは23時30分。

急いで部屋でシャワーを浴びて就寝しなくては、と思ったが、部屋のカードキーが見つからない。ドアの前でしゃがみこみ、あわてて探していたら、同じグループのM夫妻が声をかけてくれた。私たちの部屋でバッグの中身を広げて探したら?とMさん。ご主人はフロント階にあるかもしれないとすぐに降りて行ってくれた。すぐに真っ白いカードはマジックのようにバッグから現れた。
お礼を言って無事入室、1時過ぎに消灯しようとしたが、デスクの調光スタンドの明かりがどうしても消えない。前の晩は問題なかったのに。コンセントもなくコードは壁に固定されていた。仕方なく、電気ポットやカップで光を遮断してベッドに入った。
しばらくするとシャワーの水の音が聞こえた。シャワー室に行ったがシャワーは普通に閉めてある。もう疲れ切っていたので気にしている余裕もなく、そのまま7時までぐっすり寝た。
翌朝、朝食の時間、たまたま一緒のテーブルになったM夫妻に昨晩の不思議現象を報告した。もう旅も終わりなので、ザルツブルクの夜中の亡霊の話もしたが、否定するでもなく、昨夜の鍵紛失も変でしたね、とわたしが忘れていたことを思い出させてくれた。

9:40 6/13/2026
朝食後、時間があるので近所のスーパーマーケットまで散歩し、部屋に戻った。いよいよ旅の終わりの退室。カードキーを入り口近くのスロットにいれたとたん、部屋の中からバリトンの男性の愛想の良い声が響いた。
「アウフ ビィーダション!」
私はあわててテレビ?スピーカー?と部屋を見渡したが、シーンとしている空気だけだった。
確か、さようならの言葉だ、と遠い記憶を思い出し、グーグルで確認。するとドイツ語でややフォーマルな「さようなら、また会いましょう」。オーストリアではビタシェンがビタションと発音されることがある、とあった。
清々しい朝の時間、特別な体験で、旅の続きを予感するこのたびの終わりを迎えた。
