村上春樹の新刊「猫を棄てる」を読む

 

コロナの影響で、多くの店舗が閉まっている。ステイホーム、外出自粛の時だ。
それでも新聞が届き、郵便物、宅配の品が届くのはありがたい。

本屋も閉まっているので、村上春樹の新刊を電子ブックで購入した。電子ブックは10数年前から徐々に増えてきた。はじめの頃の無料の本を試読したことがあるが、有料で新刊本を購入するのは今回初めてだ。ディスプレイはどうしても目が疲れるので敬遠していた。しかし「猫を棄てる」が気になり在宅時間が長い昨今、新しい読書ツールを体験することにした。

1ページ大の挿絵が多く、台湾出身の若い画家の絵は懐かしく、繰り返し鑑賞できる作品だ。村上春樹の作品の挿絵はいつもカジュアルで楽しい。しかし今回の作品は細かい描写画で、父親の時代を反映してセピア色で昭和を思い出す。

村上の作品は小説が多いが、私はエッセイが読みやすく好きだ。長編小説も細部の描写が多く、先に進まないのが良い。今回のエッセイは自らの父親や親戚のことを語る珍しい内容だ。人は歳を重ねるとやはり、自分の先祖のことが気になってくる。特に他界した人物については発表しても良いだろうと判断する。表現者は父母の面影を残したい思いが強くなるのだろう。

個人的には文中の父親の養子のエピソードで思いが大きくふくらんだ。昔は養子、養女が多くあった。戦国時代から家や政治の事情で、皇族もそうだ。親の立場で受け流される事情だが、子供の立場は複雑だ。その人生もその分深くなる。

 

 

 

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