没後70年「吉田博展」

3月12日、吉田博の淡い色彩の木版画を求めて東京都美術館を訪ねた。最近のアニメ作家も憧れる画風だ。

明治9年から昭和25年に生涯第一線で活躍し、74歳で他界した。作品の時代背景は今日から比較的近い(と考える)。

作品を鑑賞する前、個人的に期待したことは、光る海や川、滝などの水の表情。当時の生活の様子。世界中の国々を旅することを愛した画伯の風景画。

「瀬戸内海集 光る海」吉田博
  1926、絵葉書

会場にはまるでカメラで撮ったような自然風景が数多くあり、いかに一生の間、旅の先々で自然を愛でていたかがわかる。中国蘇州は私も旅した町、思い出す。

蘇州、吉田博(1940)、※作品部分

意外なことに戦後1945年以降は1枚制作しただけだ。ー 晩年の作品は「農家」ー。

吉田画伯は人物を得意としなかったが、この絵には農家の台所で家事をする婦人が二人描かれている。当時の何気ない日常のワンシーン。戦争が終わった後、平和を徐々に取り戻した1946年の作品だ。

農家、吉田博(1946)、フリー素材

奄美大島のポンカン

 

奄美大島のポンカン

前回、奄美大島で大島紬の工場で働きながら、画家の情熱を出し切り生涯を終えた田中一村について書いた。

近頃よく日常の中で「繋がり」を感じる。奄美出身の知人から島のポンカンを頂いた。奄美と一村を思い出す。

皮は硬くて手で剥こうとすると、スムーズにはいかない。コツはナイフで四つ切りにすること。これで、苦労なく丸ごと食べられる。

ポンカンは見た目は自然体、岩肌のような黄緑色も部分的に見えワイルドだ。中身は、香りよく、甘くてジュースを飲んでるようだ。来年はお取り寄せしようと思う。

ひなまつり、田中一村
(ハガキ、部分)

「田中一村展」、千葉市美術館にて

田中一村展、千葉市美術館

2月22日、千葉市美術館を訪ねた。横浜から直通70分で千葉駅、徒歩15分以内にある。モノレールで2駅葭川(よしかわ)公園下車でも近い。

2月末までとあって予約はいらないものの入場制限され、20分くらい列に並んだ。

細長い建物の7階が展示場。一村初期の南宗画、書画、掛け軸や個人像の式紙、金屏風、友人とやり取りした葉書、晩年まで19年過ごした奄美の自然画。毛筆の字も見入ってしまう。

2020年1月、奄美大島の田中一村美術館を訪ねた。1年振りの鑑賞の機会、一村は「日本の宝」だとシミジミ感じた。花鳥風月の画家だ。昔の民家と庭、花を添えて緑繁る葉っぱを主役にした作品が多かった。

晩年の作品、孤枩(こしょう)は特にシニアに静寂を与え、共感する。海の向こうの雲が「金色の龍」の形をしている、とはなかなか気付かなかった。

孤枩、田中一村(絵ハガキ)

横浜美術館、長期改修工事前に訪ねた

横浜美術館コレクション展

今月末、横浜美術館は大規模改修工事のため、2年以上閉館になる。2月末までのトライアローグ展と美術館コレクション展と建物内装を駆け込みで見納めに行った。

特別展では、初めて出会ったジョアン・ミロの写実画。抽象画しか見たことがなかった。珍しい。

ジョアン・ミロ「花と蝶」、葉書

横浜美術館の所蔵品は撮影OK。ギュスターブ・モローの「岩の上の女神」や、横浜の風景を描いた浮世絵が印象に残った。

ギュスターブ・モロー
「岩の上の女神」

建物は1989年に丹下健三が設計した。2階の回廊の壁に鶴見区で生まれ、弘明寺の画塾に通った林敬ニの連作5点が飾られている。巨大な帆布の上、揺れ動く水の中に浮かぶ様々なモチーフを描いている。イタリアに渡り学んだテンペラ技法を使っている。

回廊に飾られた連作5作品、
林敬ニ

コロナに負けず「ガンバっ展2021」

画家のTさんからの小品展の案内葉書を頂いた。2月15日から1週間開催中だ。関内駅近くの画廊「楽」は以前も訪ねた。

T氏の絵は元気なハツラツとした女性と色彩が楽しい。今回出品の2作品は、昨年からのコロナ禍での空気をストレートに感じる。

“I hope….”, H.T

1枚目は「教会のステンドグラスを描いた」と背景の説明してくれた。
題名は “ I hope ….”

この後を個人的に考えた。
I hope for all of us to keep good balance in mind, body and spirit.

 

 

 

2枚目は少女が深刻そうな顔をして考えている。
題名は “I wish ….”

この絵画も自分に置き換えて、言葉をつなげてみた。
I wish that we could move freely as before.
I wish restrictions in our life would be removed sooner.

“I wish….”, H.T

「想いが重なるひな人形」

横浜人形の家にて故後藤由香子さん(1969〜2017)のひな人形展を3月21日まで開催中だ。

岐阜県生まれ。祖父も人形作家で子供の頃から人形作りを見て育った。十二単の着物の「かさね」の色彩が美しいお雛様たちはそれぞれタイトルを持つ。桜は作家の一番のテーマだった。

後藤由香子氏のお雛様の顔立ちは江戸時代中期の「享保雛」に似ている。私が会場で撮った写真は、自動でグーグルが同じ人物としてまとめていた。作品群は会場で流れるビデオの中で、説明するご自身にも思えた。

享保雛、江戸時代中期

 

代々元町につながる家族

先日元町の仲通りを歩いていたらショーウインドーのリュックサックが目についた。ハイキング用に軽そうでデザインも珍しい。

その店は海外の洋服と雑貨を扱っていた。金曜日の午後、客は私だけだったのでリュックサックを購入した後、服の試着が始まった。結局1時間半も滞在したのだが、その間の雑談で、興味深い話題が次々と出てきた。

オーナーの真理さんは2008年からビルの2階にジュエリーサロンを経営している。昨年コロナ渦の中、同じビル1階にブテックROSEMARIIを開店した。それは今もお元気な85歳になる母親や三人の叔母達の夢であったそうだ。四人姉妹は元町で長年、文化式の婦人服の仕立てを商売にしていた。

元町のブテックROSEMARII

興味深かったのは祖父、曽祖父、共に明治大正昭和と元町厳島神社の神主をされていた話だ。私自身も神社仏閣巡りは好きで、元町神社も二度ほど訪れたことがある。「元町でジュエリーの店、洋服の店をオープンできたのは、神主だった祖父が導いてくれたのだろう」
真理さんはいつもそう感じてお参りしている。

現在の元町厳島神社

 

 

 

元町プールと神主様

「聖なる犯罪者」

2019年製作のヤン・コマサ監督のポーランド映画を観た。
小さな農村を舞台に仮釈放中の青年ダニエルと村の老司祭、少年院の司祭トマス、村人たちが登場する。実話をもとに書かれたという。

村は少し昔の時代と思われる様相だが、教会で信者から告解を受ける時、スマホで「告解の手引き」を検索して、にわか司祭のダニエルは窮地を逃れる。村で7名が死亡した交通事故の状況証拠がメール動画に残っているなど、所々で現代を感じる。

多くの語りどころがあり、もう一度観て確かめたい。物語の展開、シーンの移り変わりが早い。監督が若く、観る方の私がシニアだからかもしれない。

シニアながらに印象に残ることは、「死に対して尊厳を感じる」主人公だ。
「少年時代、喧嘩で病院に入った相手が死んだ」、という過去を持つ。出所してすぐに酒、タバコ、歓楽に溺れるが、縁あってある村で病を持つ老司祭の代理の仕事につく。

司祭は村の冠婚葬祭に重要な役がある。いつも冷徹な目をしているダニエルの眼光が優しく変わるのは、村人の死に接する時だ。臨終のベッドに横たわる老女の手を取って「あなたは死なない」と話しかける。献花台の前で交通事故で若者を亡くした遺族たちを真剣な祈りで慰さめ、またやり場のない彼らの感情を発散させるよう導く。保留されていた事故加害者の葬儀も実現させた。

少年院でダニエルが敬愛していたトマス司祭はどういう人物だろうか、と考えた。村人や子供たちはダニエルに感謝の言葉を形にした品々を贈った。トマス司祭がそれらをじっと見つめているシーンから何か良き方向を感じたのだが。。。

絵本「コロナのことおしえて!パトスせんせい」

 

1月7日に去年4月以来、2回目の緊急事態が菅総理より宣言された。
再び自粛の日々が1ヶ月続く。今回の内容でホッとしたことは学校閉鎖が含まれていないことだ。幼稚園、保育園から小中高、大学は今まで通りだ。

感染症専門医で病理医の堤寛先生が、昨年4月の「感染症大全」に続き、「小学生低学年向け」にコロナの絵本を私版出版された。本文は堤先生、アートデザインは娘の堤久美さんが担当された。
病理学は英語で pathology、そこからパトスせんせい、すなわち堤先生が絵本の中で可愛い小学生たちにコロナについての知識をやさしく説明している。

予防項目で、うがいや歯みがきを勧めているのは目新しい。本文中、印象に残ったこと。手洗いの後、ハンカチの代わりにペーパーを使うことを勧める。水分のない乾いた場所では、ウイルスを含め、すべての生き物は生きられない。わかりやすい。

「コロナのことおしえて!パトス先生」より

「眼(あい) 天使が語った道しるべ」

初めての電子書籍

昨年12月末に幻冬舎から商業ベースでちさ&タモツの電子書籍が配信された。
2022年出版の目標を立てていたところ、コロナが間接的に影響して、1年早く現実となり、しみじみとした年末年始を送った。

当ブログにて過去30年のエッセイを投稿するうちに、まもなく旅行エッセイを含めて100篇を超えた。全体の目次がないので、読みにくくなった。個人的にもタモツさんの過去のエッセイのタイトルを見つけやすくし、読み返したい。海外にも配信して日本人のある種の伝統的な考え方を伝えたい。

昨年3月末にブログサイトを原稿として幻冬舎に相談した。すぐに電子書籍化が決まり、配信までのレールに乗った。読者にわかりやすい表現をモットーに、エッセイと詩、60篇を一行一行推敲した。

私自身は普段は紙の本を好む60代だが、今回勉強になった。
アマゾンの Kindle アプリは使いやすく、読みやすく進化していた。読み上げ機能や翻訳機能もついている。新聞もデジタルで読む読者が増えている昨今。新年は苦手意識を持たずに電子書籍を生活に取り入れてみようと思っている。

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