懐かしい隣人に会った

去年の9月11日に母のための慰霊旅行を計画し、姉とドイツのアーヘン大聖堂へと成田空港へ向かった。ちょうど桜木町のギャラリーで、去年の秋にドイツへ水彩スケッチ旅行へ行かれた増田和雄個展の案内をタウンニュースで知り、懐かしいドイツの風景画を見に行くことにした。しかし思いがけなく、この日のメインは懐かしい隣人の再会となった。

建物のフロアーに着くと、以前実家の隣りに住んでいたSさんがブティックを経営していたことを思い出した。Sさんは引っ越され、もう10年近くお会いしていない。そのビル内で洋服を扱うお店は1軒しかなく、以前と店名が違う。しかし興味本位から、お店の奥を覗くと、以前と変わらないSさんが座っていた。お互いマスクをかけているが、すぐにわかった。

彼女も「久しぶりね。お母さんはお元気?」と急に現れた私を見て驚いた。長い立ち話になりそうな予感。店の奥の椅子に座って1時間くらい近況を伝えあった。彼女は大手の洋服メーカーと販売店を経営していた。実家の隣のビルではレストランも開業していた。母が去年5月に他界したことを告げると、「お母さんにはお世話になったのよ。いつも道路の落ち葉を掃除してくれて」とすぐに昔を思い出してくれた。彼女のご主人は以前カメラマンで近所の人とは話すことは苦手だったが、母とはよくおしゃべりしたそうだ。話している間、当のご主人がフラリとやってきた。だいぶご高齢になられた。

母は、ある時、庭の野良猫が食肉の塊を加えてやってきたのを見た。すると隣のレストランから盗んだのだろうと察し、「お宅のお肉ですか?」と届けたのだ。後日、箱に入った自家製のケーキをお礼に頂いた。母は若くして結婚し、専業主婦として日々過ごしたが、たまに、積極的な社会性を見せた。

近所に住む歩行困難な同年輩の婦人は、いつも車椅子での外出だった。母が同行したとき、道路に段差があることを見つけ、市役所に報告した。段差は後日、改修されたと聞き、感心したことも思い出した。

Sさんの洋服に出会ったのは40年近く前。会社員時代は、倉庫のセールで通勤服を選び、様々な服に出会った。今はお店が一つだけになったが、お元気で明るく営業されていた。
「続けるしかない。続けることが大事ね」
Sさんの言葉に、エネルギーをもらった。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Translate »