パスポート (2)

陸路の旅と違っている点は、足が大地から離れるというところにある。長時間足が大地から離れる経験をするには、海を超えて海外に行くしかない。足が大地についていない状態は、昔、そして大昔は考えられなかった。船と飛行機の発明により、人間はこの体験ができるようになった。この新しい経験が人類に与えたものは大きい。それは単に便利さだけではなく、感覚の世界にも影響を及ぼした。自分は旅人だったという感覚は、旅が終わると同時に消え去ったように思えるが、それは後に続く日常生活の中で顔を出す。

「私は地を離れた。いっときでも地を離れた。今ある生活は地についた生活だが、また再び地を離れる時がくるだろう、そして羽ばたくだろう。渡り鳥のように」
ある人はこのように考えるかもしれない。

多くの人は海を渡った経験は忘却の彼方へ押しやり、こんなことは考えないかもしれない。少なくとも本人は認識しないだろう。しかし寝ている時はどうだろう。空を飛んでいないだろうか。

 

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