「想いが重なるひな人形」

横浜人形の家にて故後藤由香子さん(1969〜2017)のひな人形展を3月21日まで開催中だ。

岐阜県生まれ。祖父も人形作家で子供の頃から人形作りを見て育った。十二単の着物の「かさね」の色彩が美しいお雛様たちはそれぞれタイトルを持つ。桜は作家の一番のテーマだった。

後藤由香子氏のお雛様の顔立ちは江戸時代中期の「享保雛」に似ている。私が会場で撮った写真は、自動でグーグルが同じ人物としてまとめていた。作品群は会場で流れるビデオの中で、説明するご自身にも思えた。

享保雛、江戸時代中期

 

代々元町につながる家族

先日元町の仲通りを歩いていたらショーウインドーのリュックサックが目についた。ハイキング用に軽そうでデザインも珍しい。

その店は海外の洋服と雑貨を扱っていた。金曜日の午後、客は私だけだったのでリュックサックを購入した後、服の試着が始まった。結局1時間半も滞在したのだが、その間の雑談で、興味深い話題が次々と出てきた。

オーナーの真理さんは2008年からビルの2階にジュエリーサロンを経営している。昨年コロナ渦の中、同じビル1階にブテックROSEMARIIを開店した。それは今もお元気な85歳になる母親や三人の叔母達の夢であったそうだ。四人姉妹は元町で長年、文化式の婦人服の仕立てを商売にしていた。

元町のブテックROSEMARII

興味深かったのは祖父、曽祖父、共に明治大正昭和と元町厳島神社の神主をされていた話だ。私自身も神社仏閣巡りは好きで、元町神社も二度ほど訪れたことがある。「元町でジュエリーの店、洋服の店をオープンできたのは、神主だった祖父が導いてくれたのだろう」
真理さんはいつもそう感じてお参りしている。

現在の元町厳島神社

 

 

 

元町プールと神主様

「聖なる犯罪者」

2019年製作のヤン・コマサ監督のポーランド映画を観た。
小さな農村を舞台に仮釈放中の青年ダニエルと村の老司祭、少年院の司祭トマス、村人たちが登場する。実話をもとに書かれたという。

村は少し昔の時代と思われる様相だが、教会で信者から告解を受ける時、スマホで「告解の手引き」を検索して、にわか司祭のダニエルは窮地を逃れる。村で7名が死亡した交通事故の状況証拠がメール動画に残っているなど、所々で現代を感じる。

多くの語りどころがあり、もう一度観て確かめたい。物語の展開、シーンの移り変わりが早い。監督が若く、観る方の私がシニアだからかもしれない。

シニアながらに印象に残ることは、「死に対して尊厳を感じる」主人公だ。
「少年時代、喧嘩で病院に入った相手が死んだ」、という過去を持つ。出所してすぐに酒、タバコ、歓楽に溺れるが、縁あってある村で病を持つ老司祭の代理の仕事につく。

司祭は村の冠婚葬祭に重要な役がある。いつも冷徹な目をしているダニエルの眼光が優しく変わるのは、村人の死に接する時だ。臨終のベッドに横たわる老女の手を取って「あなたは死なない」と話しかける。献花台の前で交通事故で若者を亡くした遺族たちを真剣な祈りで慰さめ、またやり場のない彼らの感情を発散させるよう導く。保留されていた事故加害者の葬儀も実現させた。

少年院でダニエルが敬愛していたトマス司祭はどういう人物だろうか、と考えた。村人や子供たちはダニエルに感謝の言葉を形にした品々を贈った。トマス司祭がそれらをじっと見つめているシーンから何か良き方向を感じたのだが。。。

絵本「コロナのことおしえて!パトスせんせい」

 

1月7日に去年4月以来、2回目の緊急事態が菅総理より宣言された。
再び自粛の日々が1ヶ月続く。今回の内容でホッとしたことは学校閉鎖が含まれていないことだ。幼稚園、保育園から小中高、大学は今まで通りだ。

感染症専門医で病理医の堤寛先生が、昨年4月の「感染症大全」に続き、「小学生低学年向け」にコロナの絵本を私版出版された。本文は堤先生、アートデザインは娘の堤久美さんが担当された。
病理学は英語で pathology、そこからパトスせんせい、すなわち堤先生が絵本の中で可愛い小学生たちにコロナについての知識をやさしく説明している。

予防項目で、うがいや歯みがきを勧めているのは目新しい。本文中、印象に残ったこと。手洗いの後、ハンカチの代わりにペーパーを使うことを勧める。水分のない乾いた場所では、ウイルスを含め、すべての生き物は生きられない。わかりやすい。

「コロナのことおしえて!パトス先生」より

「眼(あい) 天使が語った道しるべ」

初めての電子書籍

昨年12月末に幻冬舎から商業ベースでちさ&タモツの電子書籍が配信された。
2022年出版の目標を立てていたところ、コロナが間接的に影響して、1年早く現実となり、しみじみとした年末年始を送った。

当ブログにて過去30年のエッセイを投稿するうちに、まもなく旅行エッセイを含めて100篇を超えた。全体の目次がないので、読みにくくなった。個人的にもタモツさんの過去のエッセイのタイトルを見つけやすくし、読み返したい。海外にも配信して日本人のある種の伝統的な考え方を伝えたい。

昨年3月末にブログサイトを原稿として幻冬舎に相談した。すぐに電子書籍化が決まり、配信までのレールに乗った。読者にわかりやすい表現をモットーに、エッセイと詩、60篇を一行一行推敲した。

私自身は普段は紙の本を好む60代だが、今回勉強になった。
アマゾンの Kindle アプリは使いやすく、読みやすく進化していた。読み上げ機能や翻訳機能もついている。新聞もデジタルで読む読者が増えている昨今。新年は苦手意識を持たずに電子書籍を生活に取り入れてみようと思っている。

「声優夫婦の、甘くない生活」

1991年、ソ連崩壊後(1990年)、国連軍とイラクのフセイン王が戦った湾岸戦争。当時を舞台に、ソ連からイスラエルへ移住したロシア系ユダヤ人声優60代夫婦の新天地での奮闘記だ。

若い監督エフゲニー・ルーマンは両親から聞いた体験話を後世に残そうとこの作品を製作した。

コミカルなタッチで描かれつつも、多くの社会的テーマが含まれている。巨匠フェリーニの作品を始めとする名作映画への熱い情熱、化学兵器に備えての政府からのガスマスク配給、移民の就職難や言語問題、熟年夫婦の問題などなど。若い観客はすぐにわからない事も多いだろう。

1991年9月、イスラエルの首都エルサレムで三週間、私は縁あって知人宅に滞在していた。湾岸戦争はすぐ終わり、観光目的の渡航が可能だった。この映画で30年前の中東の状況を思い出した。

ロシアから100万人規模のユダヤ人移民が、聖書に書かれている自分たちの祖国を目指した。ソ連にいた頃は、著名な学者、有名な音楽家、社会的地位が高かった人たちも職がなく、生活に困った。通りにバイオリンを奏でるロシア人が多く見られた。映画の主人公はこれらの中の一組の夫婦だ。

イラクからのミサイルの落下跡も残る中、人々が庭でバーベキューを楽しむ姿もあった。遠い国情が異なるイスラエルだが、日常生活やその中での感情は世界共通だ。小さな幸せがトラブルとともに交互に訪れ、将来へ続くことを描いていた。

年の瀬の景色

「良いお年を」と美容院で挨拶され、もう年の瀬が迫っていると実感した。
今年は季節感や時間の感覚が薄れている。皆はどうだろうか?

2年前に紫色の香りの良いシクラメンを見つけた。今回は2回目の購入。花の数がとても多く、日々様相が変わる。二週間目にハートの形になった。

セレナーデア、シクラメン

12月18日の金曜日、元町のクリスマスの様子を散策がてら見に行った。家なか遊びで、3Dの写真をネットで見つけ、外の風景との(※ 個人使用限定の)合成写真を撮ることを思いついた。すると同じようなことを考えている人はいるものだ。自転車にプロジェクターを積み、お洒落な店の外壁にマッピングをして歩いているグループに出会った。子供たちを交え、楽しそうに動いて行った。

プロジェクトマッピング
元町通り

 

 

 

 

 

 

 

 

私の方はヒョウとコアラで遊んでみた。今年も多くの出来事が時を刻んだ。

通りのベンチとヒョウ
今年を振り返って

12月の夕焼け

12月14日、夕刻4時30分。洗濯物を取り込む時間だ。ベランダから見える空が赤い。

美しい天然色、夕焼けの空

赤く染まった空に日が暮れる黄金色の光が見えた。近年まれに見る色彩に目を奪われた。美しい自然に出会った時、すぐにカメラを取り出すとじかに自分の眼で時間が少なくなる。この時は初めに1枚撮り、そのあとは夕焼けの空をしばらく眺めていた。いつもは刻々と変わる夕焼けだが、ゆっくりと長く続いた。グレー色の太い線が放射状に現れてきた。

冬の空気は澄んでおり遠くまで視界に入る。
地図を見ると、手前の秦野市の後ろに見えるのは、金時山(箱根)、明神ヶ岳。左は神山、駒ヶ岳と連なる。

2020年の12月、ひとときの空からのおくり物だった。

長生き観葉植物

観葉植物はインテリアに欠かせない。
私がする世話は、1週間に1、2度の水やりだけだったが、忘れることはない。我が家でいちばん長寿の木は観音竹でもう樹齢40年以上になる。買った時は1200円で30センチほどの高さだった。観音竹は葉の先が枯れやすいが、きれいな形とツヤを保っている。枯れた葉も何枚かあったが切り取った。

植え替えは根が張りすぎでできないので、植木鉢だけ特大なものに入れ替えて、安定をよくした。

一度引越しを経験しているが、今は和室の窓辺に近い場所に置いている。
旅行で10日間くらい水をあげなかった。しかしずっと元気だ。私の40年間の歴史を見守ってきた。きっと何でも知っているだろう。

観音竹、樹齢40年

次に古株なのがモンステラだ。初めは普通のモンステラの葉っぱをつけていた。20数年経って、葉のデザインが変わり、すべて丸いハート型になった。たくさんのハートが空中に浮かんでいるようで面白い。

ハートの形になったモンステラ

北鎌倉古民家ミュージアム、絣展

11月8日、日曜日の外出は久しぶりだ。
暖かな、やや曇り空の午後、絣展と近くの散策を思いつき、家を出た。

円覚寺の座禅会が催されたのか、寺の入り口は人がやや多かった。ミュージアムの中は二人。日曜日の午後とは思えない位、静かだ。その中で明治、昭和の古典的絣作品が待っていた。目を引いたのは久留米絣団地で制作されたお祝いのために作られたタペストリー。日露戦争に勝ったときの記念に創られた。日露の文字、大勝利の文字、軍旗をあしらったデザイン。他に病院が開院したときの記念品。万歳とある。古典久留米絣は幾何学模様、クロスが特徴で、はっきりした輪郭が印象的。

久留米絣、日露戦争、大勝利
病院の開院、万歳

伊予絣の自動車とケマリを並べたデザインも可愛かった。昭和初期の子供用の着物。

伊予絣、自動車と蹴鞠

今年の1月に訪ねた奄美大島の龍郷柄着物も幾何学模様が素晴らしい。

奄美大島紬、龍郷柄

お土産に久留米絣のマスクを買った。

久留米絣のマスク
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