電話の役割、昔と今

以前は固定電話を使えば、友人知人への連絡はほぼ百パーセント可能だった。
常に固定電話回線で結ばれている。家族もご無沙汰している人も目に見える固定電話回線で日夜つながっていた。

一方、昔の電話では相手を確認できず、無差別に応答しなければならなかった。強制的に電話を取らされている。受話器を取り上げない意志は許されているが、ほとんどの人は「人が良い」のでこの固定電話を受け取らない権利を行使しなかった。この人の良さは、法律でも決まっていない、電話には出るものという見えないルールの上に電話の便利さが成り立っていた。

今は電話が鳴ると相手の電話番号が表示され、受話器を取る自由、取らない自由を与えられるようになった。これは電話の歴史上、革命的なことだろう。電話があっても連絡が取れないケースが多くなるということだ。

相手を選り好みできるということは、相手からも選り好みされるということだ。以前は不特定多数の人と会話をする機会を与えられていたが、時代が進み、自分の望む人とだけ言葉を交わす。無駄な会話が省ける。突然の闖入者を拒否できる。

回線だけがいつでも誰とでもお話できます、と手を広げて待っている。
この目に見えない回線の上に新しい会話をしない便利なツールが生まれてきた。

時代と人間の要請によって、世の中は全体の一つのまとまりからグループ化が進んできた。

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