アマゾンのプライムビデオを開くと、冒頭に三島由紀夫のドキュメンタリー映画が出てきた。昨年劇場公開された。1969年5月13日、東大駒場キャンパス900号室にて東大生約1000名と三島由紀夫が討論した記録だ。TBSテレビ局で極秘保管されていた。観たかった映画に巡り合った。
50年前、私は大学1年生だった。三島由紀夫の割腹事件は朝日号外新聞を手にして知った。あれから50年経ち、歴史となって世に出た。共闘、民青、ゲバルト等々、あのような学生運動の形は過去のものになったが、今の日本を再び意識できる。91歳で世を去った母もよく「日本の行き先が心配で死ねない」と口にしていた。
当時東大生だった学生たちが70歳代になり、多くは宿題を持ちながらも好々爺となり、取材を受けている。それでも地球はまわっているのだ。
あの教室では予想に反し、いがみ合いの闘いや暴力はなかった。三島由紀夫の「個人が持つユーモア」と会場をうまく「取り仕切る才能」と「年配者としての思いやり」を終始感じた。映画で三島由紀夫に会えたのは貴重だ。
議論は喧嘩するためではなく、共通点を見出し、歩み寄るために行う。結論は出ずとも三島由紀夫が終わりに語りかけたように「この空間に言霊が飛び交い、残った」