春爛漫。
新しい門出を迎え、未来を見つめる人もいれば、過去が蘇って懐かしむ人もいる。
先日、ペルー産アルパカのベストを購入した。
民族の伝統的なデザインが可愛くモダンになっている。旅先でも家の中で背中が寒い時でも重宝しそうだ。
このベストがきっかけに18年前に他界した父のこと、その人生のことを想い出した。
父も晩年家でアルパカのグレーのベストを着ていた。母がプレゼントしたもので、本人なら選ばない可愛い系だったが、家で何年も愛用していた。
気がつけば、私は父が去った年齢79歳に近くなってきた。
アルパカのベストを着て、父が使っていたオットマンの足台に足を乗せ、テレビを観ている。傍らの父の遺品のサイドテーブルに数冊の本を積み、くつろいでいる。
晩年は外出の時、いつも真っ白な運動靴を履いていた。私も白いスニーカーを履いて散策する。
まさか私が父の日常の姿と同じになるとは。
家の中でひとり笑った。