6月3日久しぶりに映画館を訪ねた。
1日から映画館が再開され、座席が一つおきで予約でき、コロナ対策は万全だ。入り口で体温を測り、手をかざすだけで消毒液が出てくるボトルが置いてある。観客数は10名程度。会話する人もなくバラバラに座っている。
舞台はイタリア、実話、聖書に登場する死から蘇ったラザロが入ったタイトル、この三要素に惹かれ「幸福なラザロ」を観ることにした。イタリア映画の上映は数が少ない。1980年代に実際に起きた事件を題材にし、利他愛100%で生きる、無抵抗な若者ラザロの姿を描いている。
イタリアの片田舎で広大なタバコ農園を経営する伯爵夫人。無賃金で長い年月50数名の農民達を洪水があった川の向こう側で小作人として囲い、無慈悲に支配していた。子供達は学校にも行かず、電球もほとんどなく文明から外れて生活していた。しかしある時、伯爵夫人の息子が人質になる事件が起こり、メディアに晒されることになった。
聖書の中のラザロは死後4日目にイエスキリストの呼びかけで、生き返った。その後キプロスの教会の初代主教になったと伝えられる聖人だ。映画の中のラザロの生涯と異なるように見えた。この映画は狼やペットの小型犬も大事な役者で登場する。
愛の権化のようなラザロと村人の現実の厳しい生活、生きることに必死な人々の感情を全面に散りばめている。その中で、ホッとできた場面は三つ。数年振りに町で偶然ラザロを見た若い村の女性がひざまずいて、「聖人ラザロー」と崇めたこと。ナイトクラブで再会した伯爵夫人の息子がラザロ達をランチに招待した。その時、なけなしの現金から高価なお菓子を手土産に持って行ったこと。そして帰り道、教会から流れてきたオルガンの音楽が通りを歩くラザロ達を追いかけた。貧困生活の中でゆとりを感じ、安堵できるシーンだった。