母はキリスト教関係の月刊誌を数十年にわたって購読していた。
私は見出し程度を読む程度だったが、母が他界して約1ヶ月経った頃。
それは購読分最後の7月号の「サインズ」。珍しく隅々まで目を通した。
その中にアーヘン大聖堂の記事があった。ヨーロッパのキリスト教文化や美術が好きだった母。
ある時、私が家に戻ると、
「今日はイタリアの広場を散歩したよ。」
と言う。テレビをずっと見ているので、現実感があったのだろう。
母は海外に行く機会がなかった。
一緒に行きたいと思った時は車椅子。
他にもトイレ問題もあり、実現しなかった。
このアーヘン大聖堂の美しい写真を見て、読んで、ピンと来た。
ここを訪ねる! 母と共に。ケルン大聖堂も近い。二つの世界遺産を見て感じるのだ。母のセンスとも合うはずだ。
7月末、相続など実務手続きを超特急で済ませ、四十九日法要も終えて、一息ついた頃。
旅行会社を訪ね、旅の計画をたてた。1週間の予定でアーヘン4泊となんとなく親近感のあったハイデルベルグ2泊にした。
出発が9月11日なので、ホテルや航空券など早割料金が適用された。
同行の姉も私も若くはない。体力も自信がない。特急列車の予約は1等車で入れてもらう。
直行便で成田からデュッセルドルフまで11時間、帰りはフランクフルトから羽田まで13時間。
なんとか足の血行問題は大丈夫だろう。代金は全部で21万円だった。
昔、初めての欧州旅行は大韓航空で南回り、3箇所に寄りながら、24時間。
飛行機代もずっと高かった。40年も前のことを思い出した。