サントリー美術館の英一蝶の没後300年を記念した展覧会を訪れた。京都出身の一蝶、藩医の父の赴任先の江戸に移った。
江戸の文化、風俗を描き、自ら吉原で幇間として人々を笑わす盛り上げ役もした。かたや狩野派に習い、芭蕉の弟子でもあり、美声の持ち主で小唄も歌う。何と魅力的な人であるか。
町人の分際で釣りを楽しんだということで「釣りの罪」で三宅島に島流しになった。島でも人気画家で注文を多く受け、家持ち流人、結婚もして父親になる。徳川綱吉の逝去で大赦があり、晴れて江戸に戻った。
1724年2月7日、73歳で世を去ったときの辞世の句は
ーーまぎらはず浮世の業の色どりも
有りとや月の薄墨の空ーー
英一蝶は港区の日蓮宗の承教寺に眠る。ここには晩年の作、「釈迦如来像」が奉納されている。
山あり谷ありの人生を謳歌し、晩年は熱心な仏教徒として活動していたと想像できる。今度、機会をつくって彼の菩提寺を訪ねてみよう。